隠れたサインを見逃さない:身体の健康からビジネスまで

2025 年 8 月 22 日 Oli Venn 著
風邪を引いているのに無理をしたり、慢性的な痛みがあったり、あるいは違和感を抱えていたり。誰しも一度は経験があるでしょう。ゆっくりとする暇もなく、何も問題がないかのように自分に嘘をつく。筆者にもそんな経験があります。身体が発している小さな声を無視して、いつの間にか身体が悲鳴を上げるまで放置してしまう。筆者もあるとき、いつも通り過ごしていたところ、気づいたら病院のベッドの上に横たわっていました。警告を無視すると深刻な結果を招きうる、という厳しい現実を突きつけられたのです。ありがたいことに、病院食はさほど美味しくなかったものの体調はすぐに戻りました。しかしここで学んだことはとても重要なレッスンとなりました。
その時病院で学んだことについて、サイバーセキュリティの世界でも同様のことが言えます。筆者の身体が警告を送っていたように、デジタルシステムもまた常に異常を知らせるシグナルを送っています。筆者は忙しすぎて、そのことに気づけずにいました。せわしなく動き続けるビジネスの世界では、このような警告を見逃したり、テレメトリを無視したり、そもそも監視を行うツールがなかったりという事態も起こり得ます。ですがこのデジタル時代に、サイバーハックを示唆する警告を無視することは、身体の発する警告を無視するのと同程度の危険性があります。
サイバー攻撃は必ずしも一度に起こるドラマチックな事態とは限りません。最初は小さくて、ほとんど認識もできないような行為から始まります。攻撃者が足掛かりを見つけだし、ネットワークを通じて水平移動を行い、権限を徐々に拡大していきます。その過程でデジタルの「パンくず」を残します。必要な監視を行なっていなければ、そのような些細な動きは容易に見逃され、攻撃が目に見えるようになった頃には手遅れであることがほとんどです。攻撃は完了しており、データは盗まれ、回復に奔走せざるを得ません。
そこで、最新のテクノロジを駆使した強固なサイバーセキュリティ戦略が、バイタルサインを表すモニターとなります。
強固なサイバーセキュリティ戦略の例として、以下 3 つの例を見てみましょう。
- NDR(Network Detection and Response):
NDR はネットワークに対する定期健診のようなものです。異常な挙動を検知することに特化しており、例えば重要なデータベースへの不自然なトラフィック急増や、許可のない不審なデバイスによる重要サーバへのアクセス試行などを監視します。これはまるで医師が血液検査の異常値を調べるように、「正常ではない」と即座にフラグを立て、調査を促します。 - XDR(Extended Detection and Response):
XDR は統合的な治療計画に相当します。さまざまな専門医を結集して全体像を把握するように、エンドポイント、ネットワーク、メール、クラウドといった多様なデータを統合し、脅威を相関させて自動で対応します。攻撃者の行動は単一の領域にとどまることは少ないため、この包括的な視点が不可欠です。XDR によって攻撃の全体像を明確にし、被害を最小化し、回復を早めることができます。 - MDR(Managed Detection and Response):
MDR は専属の医療チームのような存在です。独断で咳や痛みを診断する代わりに、専門知識と専用ツールを備えたチームが 24 時間体制で監視・解析を行います。単にデータを収集するだけでなく、脅威を示すパターンや異常を特定し、兆候を察知すれば即座に対応します。発熱を初期段階で察知し、本格的な感染になる前に治療することと似ています。
筆者の個人的な体験が「身体の声に耳を傾けること」の大切さを示したように、サイバーセキュリティの世界でも「システムの声に耳を傾けること」が求められています。デジタル世界の病院で具合が悪くなる前に、警告サインを見逃さず、微細な変化を検知し、問題が大きくなる前に、対応するツールと専門知識に投資しておくべきです。なぜなら、身体であれ、デジタル環境であれ、「見落としてしまったサイン」こそが最も大きなダメージをもたらすからです。