MSP 向けクラウドリスク管理:可視化から制御へ
リスクを可視化することと、リスクの優先順位を付けることは同じではありません。このブログでは、MSP が対応するクラウド上の検出結果について、顧客のデータの価値が対応の優先順位をどのように左右するのかを解説します。
2026 年 9 月 15 日 編集部
ウォッチガードのパートナーである Impact Business Technology 社の創業者兼 CEO 、Neil Holme氏による寄稿。
MSP が管理するクラウド環境は、毎週のように変化しています。顧客は新しい SaaS アプリケーション、AI ツール、コラボレーションサービスを導入するため、何が利用されているのか、どのように設定されているのか、そしてどのアクセス権限が有効なままなのかを把握することが難しくなっています。明確な警告がないままリスクが増大し、インシデントが発生して初めて問題が明らかになることもあります。
また、クラウドは、MSP が管理する攻撃対象領域の中でも最も急速に拡大している領域です。SaaS の導入、AI を活用したツール、ハイブリッド環境が急速に普及する中、設定ミス、アイデンティティの侵害、シャドー IT に伴うリスクも増大しており、顧客環境に潜んだままになっています。
多くの MSP は、顧客のクラウド環境を可視化できていると考えています。しかし実際には、問題の一部しか把握できていません。シャドー IT、過剰なアクセス権限、侵害されたアイデンティティは、1 件のアラートも発生させることなく、数週間から数か月にわたって環境内に潜んでいる場合があります。
環境の各レイヤーにはそれぞれ固有のリスクが存在するため、アナリストが問題を迅速に検出するために必要な全体像を把握できていない場合があります。SaaS アプリケーションの設定ミスによって、不要なアクセス権限が開いたままになっていたり、確認されていない OAuth 接続が維持されていたりする可能性があります。アイデンティティが十分に保護されていなければ、フィッシングや認証情報の窃取、正規のアクセス権限の悪用などによって侵害される可能性があります。また、単独のアラートをコンテキストなしで見ると、それがはるかに大きなリスクの一部であっても、重要ではないように見えることがあります。
これらの調査の多くで欠けている重要な情報があります。それは、こうした問題がどれほど重要なのかを左右する情報です。設定ミス、適切に保護されていないアイデンティティ、安全でない接続はいずれも最終的には顧客のデータに関わります。そして、そのデータの価値によってリスクの深刻度が決まります。現在、セキュリティ侵害の 70% がクラウドに保存されたデータに関係しています(IBM「2026 年データ侵害のコストに関する調査」)。データの重要性を考慮しなければ、リスクの深刻度を評価することは困難です。
MSP にとっての課題は、インシデントが深刻化する前に、こうしたさまざまな兆候を関連付けることです。アナリストは、アカウント上の不審なアクティビティを検知したり、安全性の低い設定を特定したり、シャドー IT を発見したりすることがあります。しかし、可視化、セキュリティポスチャ管理、インシデント対応がそれぞれ別の管理画面で行われている場合、問題を迅速に検知して対応する能力は大きく低下します。その結果、クラウドセキュリティは、手作業によるレビューや断片的な分析に依存し、リスクが特定されてから初めて対処を開始する、受け身のモデルになってしまいます。
プロアクティブなクラウドセキュリティを支える 3 つの柱
こうした状況に対応するには、MSP は単独で動作する分断されたツールから、リスクに関するさまざまなシグナルを関連付け、コンテキストを提供し、対応時間を短縮できる統合プラットフォームへと移行する必要があります。可視化、セキュリティポスチャ管理、アイデンティティ脅威の検知を組み合わせることで、ますます複雑化するクラウド環境を適切に管理できるようになります。
プロアクティブなアプローチに移行することは、サービスデスクに送るアラートを増やすことではありません。MSP に求められる変化は、断片化されたデータを有用な知見に変え、それをすべての顧客に対して大規模に実現することです。それには、相互に連携した 3 つの機能が必要です。
1. 可視化
クラウド環境を常に最新の状態で把握できなければ、明確なアラートが発生しないまま、リスクへの露出が拡大する可能性があります。可視化とは、どのアプリケーションが利用されているのか、どのアクセス権限が有効なままなのか、どのような設定がリスクを生み出しているのかを把握することです。
実践的には、環境に接続しているデバイス、環境内で稼働しているソフトウェアやクラウドアプリケーション、環境上で活動しているアイデンティティ、そしてそれらのアイデンティティがアクセスできるデータの 4 つのインベントリを把握することになります。MSP は、運用するエンドポイント、ネットワーク、クラウドサービスを通じて、すでに最初の 3 つを収集しています。データのインベントリは、通常、把握できていないことが多い情報です。これはビジネス上のコンテキストに依存するものであり、その情報を提供できるのは顧客だからです。各部門の責任者に、最も価値の高いデータは何か、そしてそれが失われた場合にビジネスにどのような損失が生じるのかを簡単に確認するだけでも、実用的なデータインベントリを作成できます。
さらに、これらと併せて、アイデンティティの認証がどこで行われているのか(シングルサインオンの対象外となるアプリケーションも含む)、そしてどのサードパーティプロバイダーが環境にアクセスできるのかという 2 つのインベントリも把握しておくと役立ちます。いずれも攻撃の標的であり、侵害される可能性のある攻撃経路ですが、監視対象から外れたままになりがちです。
2. 優先順位付け
エクスポージャを特定できたら、次に考えるべきなのは、どのリスクにまず対応すべきかということです。深刻度だけでは、リスクを正確に評価することはできません。重要なのは、コンテキストです。
同じテナントを利用する 2 人の従業員を考えてみましょう。1 人目は倉庫作業員で、アカウントの多要素認証(MFA)の設定が不適切、あるいは MFA 自体が設定されていません。基本的なセキュリティ対策が欠けているため、このアカウントは組織内でも特にリスクの高いものに見えます。では、このユーザーがアクセスできる情報を見てみましょう。それは、勤務シフト表、タイムカード、社内のお知らせページです。これらを考慮すると、リスクエクスポージャは小さいといえます。2 人目は、育児休業中に在宅勤務をしている上級会計担当者です。MFA は正しく設定されていますが、監視されていない個人所有のノート PC を使っているか、業務を継続できるよう条件付きアクセスのポリシーで例外が設定されています。こちらは、検出された問題自体ははるかに限定的ですが、リスクははるかに大きくなります。アクセスできるのが、支払い、給与、年度末決算などの規制対象となる財務データだからです。
セキュリティ対策の不備の深刻度だけで評価すれば、倉庫作業員のアカウントがもたらすリスクのほうが大きくなります。しかし、データに関するコンテキストを加えて評価すれば、会計担当者のアカウントがもたらすリスクのほうが深刻です。優先順位付けによって、アナリストはこの 2 つを区別し、すべての顧客に対して同じ判断基準を一貫して適用できるようになります。
3. 対処
早期に問題を検知しても、是正措置につながらなければ意味がありません。設定を変更する、不要なアクセス権限を取り消す、サードパーティとの接続を確認する、不審なアクティビティを封じ込めるといった対応によって、インシデントに発展する前にエクスポージャを低減できます。マルチテナント環境では、こうした対応を一貫して行う必要もあります。そうしなければ、修正するたびにサービスデスクの負担が増えてしまいます。
クラウドリスク管理を簡素化する
可視化するだけでは、リスクを低減することはできません。顧客のリスクを評価するアナリストには、リスクの優先順位を判断するために必要なコンテキストと、インシデントが発生する前に対応するための機能の両方が必要です。受け身のモデルからプロアクティブなモデルへ移行するには、可視化、優先順位付け、対処を、統合されたCloudDR(Cloud Detection and Response)プラットフォームに集約する必要があります。可視化によって環境全体を把握し、優先順位付けによってリスクの順位を決め、対処によってエクスポージャを低減する。これらすべてを、アナリストが単一の画面から行えるようにします。
WatchGuard CloudDR は、シャドー IT およびシャドー AI の検出、クラウドセキュリティポスチャ管理、アイデンティティ脅威の検知・対応を、マルチテナント管理向けに構築された単一のエージェントレスプラットフォームに統合します。MSP は、単一のコンソールから、許可されていない SaaS アプリケーションを特定し、安全性の低い設定を検出し、不審なアカウントアクティビティを確認し、顧客のリスクへの露出を高めるサードパーティ接続を調査し、どのファイルが公開または外部共有されているのかを確認できます。これにより、前述したインベントリの大部分を把握でき、3 つの異なる場所で確認するのではなく、必要な情報を 1 か所に集約できます。
こうした情報を一元化することで、マルチテナント管理の一貫性が確保されます。各環境を個別のケースとして調査するのではなく、MSP はすべての顧客に同じ基準を適用し、どこにリスクが集中しているのか、どのエクスポージャにまず対応すべきか、そしてどのように迅速に対処するかを判断できます。さらに、影響を受けるすべての顧客に対して、同じ修正を 1 回の操作で適用できます。
クラウド環境が拡大するにつれて、MSP がクラウド環境を保護する能力を左右するのは、ツールを追加することよりも、可視化、コンテキスト、対応を 1 か所に集約することになるでしょう。最も重要なコンテキストは、顧客から得られるものです。顧客にとって最も価値のあるデータは何か、それに誰がアクセスでき、どのような情報にアクセスできるのかを確認し、その内容に応じて対応の優先順位を決めてください。このステップを省くと、リスクを部分的にしか把握できません。その結果、顧客に誤った安心感を与えてしまいます。
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