2025/09/23
身代金を払う時代の終焉:英国の方針が示す新たな局面

2025 年 9 月 23 日 Oli Venn 著
これまでランサムウェア攻撃集団は、企業を人質に取って「身代金を払うか、システム崩壊を許すか」という恐ろしい選択を強いてきました。しかしそのような時代も終わりを迎えつつあります。NHS(英国国民保健サービス)や高級百貨店 Harrods を含む多方面でのサイバー混乱を受け、英国政府は明確なラインを引きました。それは「秘密裏に支払うことは許さない」「重大な攻撃を隠蔽させない」という宣言です。
新ルールが示すもの
- 身代金の支払い禁止:NHS、自治体、学校などの重要インフラは、身代金の支払いが禁止されます。
- 報告の義務:それ以外の組織に対しても、侵害を受けた際には報告の義務が課せられます。
この政策は、犯罪者に支払いをして済ませるという「最後の手段」を主要経済国としては初めて封じるもので、非常に思い切った反ランサムウェア政策です。
なぜ今なのか? 原因はこの夏の連続被害
今夏、英国では次のような被害が相次いで報じられました。
- 大手百貨店 Marks & Spencer が攻撃され、多くの顧客が混乱。
- スコットランドの NHS では予約遅延の発生、また患者記録がリスクのある状態に置かれる。
- 政府の法的支援機関が、機密ファイル盗難の被害を認めざるを得ない状況に。
一連の事件が示すメッセージは明白です。どのような業界も安全ではないという点、そして被害は身代金だけにとどまらない、という点です。
英国以外の動き
英国だけが動いているわけではありません。ランサムウェア対策を掲げる国際連合体「カウンターランサムウェア・イニシアティブ」には既に 50 か国近くが加盟し、サイバー犯罪集団に対する包囲網を強めています。最新の会合では各国が情報を共有し合い、AI を活用して攻撃を予測・阻止する動きについても話し合われました。
ユーザはどう動くか?
政府が「身代金を支払う」逃げ道を閉ざす中、残された選択肢はひとつです。それは「防御を強化する」ことです。高度な攻撃を使わずとも、パスワードがひとつ盗まれるだけで、ネットワークは突破されえます。
具体的な対策
- 多要素認証(MFA)をすべての場所で有効に。
- 書き換え不能なバックアップを用意しておく。
- フィッシングメールに対する従業員教育を徹底。
- インシデント対応計画を、火災訓練のように定期的に演習。
今や選択肢として存在するのは「支払うか支払わないか」ではありません。状況は刻々と移り変わり、時代は「堅牢か脆弱か」という選択肢を迫っています。
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