2026/09/28

導入が進むAIと未成熟なセキュリティ対策:市場に眠る新たな機会

AI は、攻撃を高速化しているだけではありません。管理しているすべての顧客の環境に新たな攻撃対象領域を生み出すと同時に、他社に先を越される前に MSP が提供できる新たなサービスの機会も生み出しています。

2026 年 9 月 28 日、Adam Winston 著

今年、どのベンダーも同じことを言っています。「AI がサイバーセキュリティを変革している」と。それは事実です。しかし、それだけでは役に立ちません。

ここからが重要です。AI は、同時に 2 つのことを引き起こしています。
1 つは、脆弱性が発見されてから悪用されるまでの時間を短縮していることです。この問題については、誰もが語っています。
もう 1 つは、顧客のビジネス環境にまったく新しい攻撃対象領域を、気付かれないまま作り出していることです。
この問題への対策はまだ誰も提供していません。

顧客は MSP に相談することなく、この新たな攻撃対象領域を作り出しています。顧客は Copilot のライセンスを購入しています。財務部門の誰かが ERP にエージェントを接続しています。開発者は、本番環境のトークンを保持するノート PC 上で MCP サーバーを実行しています。そのどれも MSP のドキュメントには記載されておらず、監視もされていません。それでも、何か問題が起きれば、すべて MSP が責任を負うことになります。

数字を見れば、今すぐ対応すべき理由が分かります。最新のレポート「IT サポートからサイバーセキュリティの中核拠点への転換:MSP の成長に向けた新たな使命。」によると、91% の組織が AI を利用した脅威を懸念しており、44% がプロバイダーに AI を活用した検知と対応を求めています。また、同じく 44% が、そのサービスに対して追加料金を支払う意向を示しています。

つまり、需要があり、予算もあるのです。足りないのは、サービスを支えるスタックです。

MSP が今後構築すべき AI 対応スタック

これは理念についての話ではありません。具体的なサービスです。

  1. AI 利用状況を把握します。見えないものを保護することはできません。ところが今、多くの MSP は、顧客がどの AI ツールを利用しているのかさえ把握できていません。DNS、Web、ネットワークのテレメトリを通じたシャドー AI の検出は、この分野に参入するための最も低コストな方法であり、顧客が実際に目を通す四半期レポートにもまとめやすいものです。
  2. ファイルだけでなく、プロンプトを対象としたデータ保護が求められています。従来の DLP は、ファイルが外部に持ち出されるのを防ぐために設計されていました。新たなリスクは、従業員が顧客リストをチャット画面に貼り付けたり、正規の認証情報を持つエージェントが SharePoint サイトから機密データを取得し、自社が管理していない AI モデルに取り込んだりすることです。データの制御も、単純に「許可するか、拒否するか」という考え方から、アプリケーションを安全に利用できるようにするという考え方へ移行する必要があります。そうしなければ、ユーザーは MSP の管理を迂回するようになり、MSP は可視性を完全に失ってしまいます。
  3. マシンとエージェントのアイデンティティの保護も重要な課題です。人間以外のアイデンティティは、人間のアイデンティティを上回るペースで増えています。API キー、サービスアカウント、OAuth の権限、エージェントの認証情報などです。これらには MFA が設定されていないことが多く、有効期限も設定されていないことが多いため、テナントへの侵入経路としてますます狙いやすくなっています。長期間有効なトークンで目的を達成できるなら、攻撃者がわざわざパスワードをフィッシングする必要はありません。
  4. ブラウザが実質的なエンドポイントになっています。AI を使った業務は、ブラウザのタブ上で行われます。つまり、ブラウザは、データが外部に流出する場所であり、悪意のある拡張機能が潜む場所であり、プロンプトインジェクションによって AI エージェントが悪意のあるインサイダーとなる可能性のある場所になっています。ブラウザレイヤーのセキュリティ対策は、「あると望ましいもの」から「必須のもの」へと変わりつつあります。
  5. AI を活用したコードのサプライチェーン社内開発を行っている顧客は、AI が生成したコードを使ってソフトウェアを開発・リリースしています。そのコードには、実際には存在しない依存関係や、正規のパッケージ名に似せた偽の依存関係が含まれていたり、経験の浅いレビュアーでは見抜けない脆弱性が潜んでいたりする可能性があります。エンドポイントとサプライチェーンのセキュリティ対策では、顧客のチームが 6 か月前から使い始めたツールが生成するコードまでカバーする必要があります。
  6. 人による検証を組み合わせた包括的な検知と対応が求められています。上記のどのカテゴリでも、テレメトリが生成されます。しかし、午前 3 時に誰も監視していないコンソールにテレメトリが溜まっているだけでは、何の価値もありません。MDR によって、新たな AI 攻撃対象領域への対応を、請求書に載せられる具体的な成果へと変えることができます。また、MDR は自動化が適切に機能しているかを人が確認するためのレイヤーでもあります。

利益率の罠

ここで、多くのプロバイダーが判断を誤ります。

問題が 6 つ増えたからといって、新しい製品を 6 つ導入する、というのがありがちな対応です。6 つのコンソール、6 社のベンダー、6 つの請求書、そして、すでに対応しきれていないチームの対応待ちキューに、6 種類のアラートが流れ込むことになります。それでは、顧客の安全性は高まりません。対応は遅くなり、利益率は悪化し、増え続ける業務を処理するための人員も確保できなくなります。

このサイクルで勝ち残る MSP は、統合を進めています。1 つのマルチテナントコンソールにテレメトリを集約して相関付けし、繰り返し発生する作業を自動化することで、アナリストが専門的な判断を必要とする意思決定に時間を使えるようにします。自動化はアナリストに取って代わるものではありません。1 人のアナリストの力を 5 人分にするものです。

製品ではなく、成果を売る

顧客が買うのは AI ではありません。顧客が求めているのは、検知から対応までの時間の短縮、重要度の低いアラートの削減、そして安心して業務に取り組めることです。そこから話を始めましょう。

そして、目の前には新たなサービスの機会もあります。AI の利用状況とリスクの評価は、料金を請求でき、繰り返し提供できるサービスであり、前述したすべての製品につながる自然な入口になります。現時点で、従業員がどの AI ツールを利用しているのか、また、それらのツールがどのデータにアクセスできるのかを把握できている顧客はほとんどいません。その問いに最初に答えられるプロバイダーになれば、そこを足がかりに、ほかのサービスも提供できます。

脅威は今や、マシンスピードで動きます。人間の対応速度を前提に構築されたセキュリティ運用では、勝てません。優位に立つのは、単に AI を使っていると主張するだけでなく、AI を活用して自らの対応能力を拡張するプロバイダーです。

顧客の期待がどのように変化しているのか、そしてどこに成長の機会があるのかについては、ウォッチガードのレポート「IT サポートからサイバーセキュリティの中核拠点への転換:MSP の成長に向けた新たな使命(英文)」をご覧ください。

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