2019/12/12

ロンドンで開催された Wi-Fi NOW 2019 の 5 つの重大トピック

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2019 年 12 月 12 日 Ryan Orsi 著

Claus Hetting 氏が率いる独立組織である Wi-Fi NOW は、Wi-Fi 業界におけるソートリーダーシップアジェンダを形成しています。Wi-Fi NOW のミッションは Wi-Fi 全般に関するサポートとプロモーションに及び、個人、キャリア、サービスプロバイダ、テクノロジベンダ、規制当局とも連携しています。Wi-Fi 環境で新しい何かが起こるとしたら、どこかの Wi-Fi NOW イベントで必ず最初に議論されます。今年の Wi-Fi NOW ヨーロッパイベントはロンドンで開催され、私と数人の同僚も参加しました。Wi-Fi 業界の仲間による素晴らしいプレゼンテーションや未来を見据えた多くの知見に触れることができ、それらについて考えをめぐらせました。このイベントに惜しくも参加できなかった方は、Wi-Fi エコシステムに関わるデバイスのユーザー、インストールするユーザー、サポートするユーザーにとって大きな変化が今後到来することを示唆する、最も注目するべき 5 つのトピックについて、私なりの要約と分析を以下に掲載していますので、ぜひご覧ください。

1.Wi-Fi 6

802.XX という Wi-Fi 規格のバージョンはすっかり過去のものとなりました。Wi-Fi Alliance はよりシンプルな採番規格を適用し、最新の規格は、Wi-Fi 6 と呼ばれます。今回のバージョンアップは業界にとって大きな進歩になっています。改善点を端的に示すと、多数のクライアントが使用する状況(IoT、イベント会場、キャンパスなど)や、トラフィックが膨大である場合(AR、VR、オンラインゲーム、ビデオ会議など)の Wi-Fi パフォーマンスが劇的に向上します。Wi-Fi 6 のアクセスポイントおよびルータに接続されたノート PC、スマートフォンなどの Wi-Fi 6 クライアントはより快適に動作し、空港、会議場、または鉄道駅などの混みあった場所でも、これまでの Wi-Fi ではありえなかった安定性と信頼性を実現します。「Wi-Fi が全然使えない」と嘆き、Wi-Fi をオフにしてセルラー通信に切り替えることが、これまでなかったでしょうか?Wi-Fi 6 では技術が格段に進歩し、このような状況は過去のものとなるかもしれません。

・直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式が通信効率を上げます。
・TWT(Target Wake Time)が、通信効率と IoT デバイスを含むデバイスのバッテリーの持ちを飛躍的に上げます。
・1024-QAM(1024 Quadrature Amplitude Modulation)の採用によって、帯域幅を高負荷で使用する際、同じ周波数に対して、より多くのデータをエンコードできるため、スループットが向上します。
・送信ビームフォーミングによって、特定の範囲に対するデータ転送レートが向上し、ネットワークキャパシティが向上します。
・これらの機能向上は、2.4GHz と 5GHz のどちらも対象となっています。4Ghz は、2009 年以降大きく進化していません。

2. 6GHz

家庭用のルータが入っていた箱の説明書を読んだことがあるか、ある程度の Wi-Fi の知識を持っていたら、Wi-Fi には、2.4GHz と 5GHz の 2 つの周波数帯があることをご存じでしょう。そこに、新たに 3 つめの周波数帯である 6GHz が加わろうとしています。Wi-Fi に使用される周波数が増えることで、より多くの Wi-Fi デバイスが同時にデータを送受信できるようになります(競合を起きづらくするとも言えます)。

3. AI/ML + Wi-Fi

企業のアクセスポイントや家庭用ルータには、Wi-Fi 無線のために微調整することのできるドライバ設定が文字通り何百もあります。もちろん Wi-Fi のすべてを熟知している仙人のようなユーザがいないわけではないですが、トラフィックロード、クライアント数、室温、ドアの開閉状況、人の動きなど、環境内の動的な変数をすべて把握し、それに合わせてドライバ設定を変更して最適化できるユーザーはいません。Wi-Fi の最大の目標は、人工知能と機械学習アルゴリズムを用いて動的に周波数設定を微調整し、一般ユーザが「Wi-Fi が全然使えない」と文句を言う際の根本原因を探り当て、ネットワークの管理者に問題を解決するためのオプションを提案してくれることです。この究極の課題を解決する完全なコードはまだ見つかっていませんが、強固なロードマップを掲げ、優れた効果を発揮することが期待されるツールを提供する可能性がある Wi-Fi アクセスポイントベンダも存在します。

4. Wi-Fi ハッキングの防止

現在のような形式の Wi-Fi は、2019 年に 20 周年を迎えました。この 20 年間は、攻撃者が秘密裡に Wi-Fi ユーザのデータやパスワードや Web サイトトラフィックを傍受できるような、6 つの Wi-Fi 脅威カテゴリが存在していました。業界としては、近年のWPA2 と WPA3 暗号化のハッキングにも対応しなければならず、今回のイベントでは、ユーザーを Wi-Fi のハッキングからいかに守るか、というテーマが色濃く反映されていました。ウォッチガードはスケーラブルでセキュアな無線 LAN の迅速な構築を支援する「Trusted Wireless Environment Framework」を提唱しています。これは Wi-Fi セキュリティへの意識を高め、Wi-Fi ネットワークでのこれらの攻撃に対する脆弱性の簡単なテスト方法と、攻撃対象領域を徹底して排除する方法を提供しています。

5. 5G と Wi-Fi

次世代のセルラー通信技術である 5G が身近になろうとしていますが、これには、Wi-Fi という強力なパートナーがいます。気づいていない人も多くいますが、今、空港やショッピングモールなどの公共エリアの近くでは、スマートフォンに「4G LTE」や「5GE」と表示されていても、実際には Wi-Fi アクセスポイントに接続されており、データは Wi-Fi を通じてやりとりされています。携帯電話会社は、すべてのスマートフォンに充分な帯域幅を確保できるほどの数の周波数スペクトルとネットワークキャパシティを持っていないため、パスポイント(ホットスポット 2.0 とも呼ばれる)を利用し、自動でスマートフォンのトラフィックをセルラー通信塔からパスポイントに準拠した Wi-Fi ネットワークに切り替えています。Cisco によれば 4G トラフィックのおよそ 54% が Wi-Fi にオフロードされており、5G になると、モバイルユーザ向け帯域幅の需要が急激に増加するため、その数字は 70% を超えることになると予測されています。このブログ読者の皆さんは、5G から Wi-Fi への切り替え時の攻撃について注意を呼びかけるこちらの記事(英文)も併せてお読みください。