2025/07/11

DORA と NIS 2:規制対応を MSP の強みに変える

2025 年 7 月 11 日 Stephen Helm 著

サイバー脅威は刻々と進化し、その影響も増し、経済や社会構造にますます深い影響を及ぼしています。企業インフラへの攻撃から、虚偽の情報による政治的キャンペーン、病院や交通網といった重要環境を標的にしたランサムウェアまで、その影響は技術的なものにとどまらず、社会システムそのものに及んでいます。

EY によれば、サイバー脅威の総被害額は 2025 年には 10.5 兆ユーロに達すると予測されています。そこで EU はより強力で野心的な規制枠組みを導入しました。まず、NIS 2 指令は、重要サービス事業者に対するサイバーセキュリティの範囲と義務を拡大するものです。もう一方の DORA 規制は、金融部門のデジタル運用レジリエンスを確保するための具体的な要件を導入します。両者には違いがあるものの、共通の目的は、ヨーロッパの経済的安定を脅かしかねないサイバー攻撃に対する予防・対応・復旧能力を強化することです。

このような要件への適応は、多くの組織にとって負担となります。しかし、マネージドサービスプロバイダ(MSP)にとっては、この新たなデータ規制を逆に利用することで、成長や戦略的ポジショニング、顧客への価値提供の機会を得ることも可能です。

DORA と NIS 2 がもたらす MSP にとっての機会とは

上記の規制は、あらゆるレベルでのサイバーセキュリティ強化の必要性に対応するものです。MSP は、顧客が内部チームを拡大することなく専門的サービスを提供できる立場にあるため、戦略的な味方となります。規制要求に対応するため、MSP は以下のような重要な要素を組み込み、規制に沿った一貫性ある価値提案を構築することができます。

  • セキュリティ評価:
    MSP は、顧客のサイバーセキュリティ状況を把握する必要があります。初期評価では、重要アセットの特定、脆弱性の検出、インシデント対応能力の評価を行います。この段階では、シミュレーションや管理された監査を含め、既存手順をテストします。これらの知見に基づき、MSP は現実的なコンプライアンスへのロードマップを作成し、セキュリティ投資を最適化し、パーソナライズされたサービスを提供し、顧客との関係を強化します。
  • 内部統制の強化:
    MFA、エンドポイント保護、ネットワークセグメンテーションといった統制は必須であり、第一線の防御策です。MSP は、顧客のリスクレベルに応じて、こうしたメカニズムを一貫して導入できるようサポートし、内部リソースを圧迫せずに検知・対応能力を向上させます。これによりアップセルや新規ビジネスの機会も広がります。
  • セキュリティポリシーの運用:
    セキュリティポリシーを実際の運用に落とし込めていないケースは多々あります。MSP は、明確なガイドラインの策定、定期的なテスト、シミュレーションの実施を通じて、ポリシーが日常業務で効果的に機能しているかを検証し、顧客のセキュリティ管理を向上させることができます。
  • サプライチェーンリスク管理:
    第三者経由のサイバー攻撃はますます一般化し、かつ多大な影響を与えるものへと進化しています。組織は、自社の境界の外側まで視野を広げ、取引先にも同等のセキュリティ保証を求める必要があります。そのため、リスク基準に基づく第三者評価、新規制枠組みに沿った SLA の要求、そしてコンプライアンスの継続的監視が重要です。これにより、サプライチェーン上の盲点を減らせます。
  • 規制監査への備え:
    企業の大きな懸念の一つは、監査時にコンプライアンスを証明できるかどうかです。したがって、トレーサビリティとレポート作成は重要な要素となります。MSP は、リアルタイムの指標を集約したダッシュボードの提供、セキュリティイベントの記録、監査証跡を確実に記録することなどによって、安心感を提供できます。自動コンプライアンスレポート、インシデント概要、ポリシー遵守記録といった高度なレポート機能は、監査時に容易にコンプライアンス準拠を証明する役に立ちます。このようなツールは、規制当局への透明性を確保するだけでなく、顧客との信頼や責任感も強化します。

DORA と NIS 2 は単なる規制ではありません。MSP が活用すべきビジネスチャンスであるといえます。迅速に適応すれば、単に規制遵守につながるだけでなく、コンプライアンス監査やコンサルティングといった新たなビジネス領域を開拓できます。規制の専門家としてのポジションを確立すれば、コンプライアンス準拠が必須となる分野での競争優位を獲得できます。今こそ、単なる技術を提供する立場を超えて、顧客のビジネスを守り、拡大し、安全を確保する重要な戦略パートナーとなるときです。