高度な攻撃に、高度なスキルはもはや必要ない
人工知能(AI)によって、専門知識やノウハウ、攻撃の実行に必要な手段を利用しやすくなり、高度なサイバー攻撃能力を身に付けるためのハードルが下がっています。
2026 年 9 月 1 日 Iratxe Vazquez著
これまで、高度なサイバー攻撃は、その背後にいる攻撃者のスキルや能力と密接に結び付いていました。
高度な攻撃キャンペーンを実行するには、標的を調査し、環境を理解し、相手を信頼させるやり取りを作り出し、何かがうまくいかなかった場合には対応を変え、複雑な攻撃活動を調整するための知識、リソース、時間を備えた、経験豊富なサイバー攻撃者が必要でした。
しかし、AI によって、その関係が変わり始めています。
AI によって、すべての攻撃者が一夜にしてサイバーセキュリティの専門家になれるわけではありません。しかし、これまで高度なスキルを持つ攻撃者と経験の浅い攻撃者を隔てていた多くの障壁が、取り除かれつつあります。かつては専門的な知識と多大な手作業に大きく依存していた能力も、AI によって支援、迅速化、そして大規模な展開が可能になりつつあります。
その結果、サイバーセキュリティにおける最も重要な変化が起こりつつあります。
高度な攻撃を仕掛けるのに、高度なスキルを持つ必要はもはやありません。
これまでサイバー犯罪には専門性が求められ、それが一つの制約となっていました。
標的の環境を把握し、弱点を見つけ、信頼されるコミュニケーションを作り出し、状況に応じて手法を変えるには、経験を通じて培われた知識が必要でした。
このような専門性を持つ攻撃者はこれまで限られており、それが高度な攻撃活動を制約する要因にもなっていました。
AI により、これまで一部の高度なスキルを必要としていた能力がより利用しやすくなり、このような専門性を身に付けるハードルも下がっています。これまで、広範な調査や技術的な理解、実際の攻撃活動の経験を必要としていた作業も、AI を活用した支援によって実行できるようになりつつあります。
これは、すべての攻撃者が高度なスキルを持つようになるという意味ではありません。経験豊富なサイバー攻撃者は、依然として大きく優位な立場にあります。
しかし、これまで実現するのがはるかに難しかった高度な攻撃を、より多くの攻撃者が実行できるようになっています。
簡易な攻撃と高度な攻撃の間にあったハードルは、次第に低くなっています。
高度な攻撃能力を、より容易に利用できるように
成功するサイバー攻撃は、最初の悪意ある活動が実行されるはるか前から始まっていることが少なくありません。
その出発点となるのは「理解」です。組織、そこで働く人々、利用しているテクノロジー、組織間の関係、そして攻撃につながる機会がどこに存在するのかを理解することです。
これまで、こうした理解を得るには、時間と専門知識が必要でした。攻撃者は、情報を手作業で収集し、関係性を分析し、攻撃を集中させる領域を判断する必要がありました。
AI は、情報をより迅速に処理し、複雑な情報を要約し、パターンを特定し、意思決定を支援することで、この状況を変えています。
AI による利点は、単に攻撃者がより速く行動できるようになることではありません。
これまで高度な知識に依存していた作業を、より容易に実行できるようになることです。
高度な攻撃も、より少ない手作業で可能に
高度なスキルを持つ攻撃者の特徴の多くは、状況に応じて攻撃手法をカスタマイズし、適応させる能力にあります。
攻撃者は、状況を理解します。コミュニケーションの内容を調整します。置かれている環境に応じて、どの手法を使うかを選択します。
これまで、このレベルのカスタマイズを一貫して行うのは困難でした。多大な人的作業が必要だったためです。
AI は、攻撃者がこうした高度な行動の一部を、より少ない手作業で再現できるよう支援し、状況を変えています。
ソーシャルエンジニアリング攻撃は、より標的に合わせたものになります。調査は、より網羅的になります。攻撃戦略は、より多くの情報に基づいて立てられるようになります。
こうした効果を生むのは、AI そのものではありません。
これまで、より多くの時間、知識、経験が必要だった能力を、AI によって攻撃者が利用しやすくなることが大きな要因です。
経験だけが適応力を身に付ける道ではなくなっている
適応力は、これまで高度な攻撃と初歩的な攻撃を分ける特徴の一つでした。
経験豊富な攻撃者は、攻撃活動の中で起きたことから学びます。ある手法がうまくいかなければアプローチを変え、妨害に遭えば戦略を修正し、別の侵入経路を探します。
AI によって、こうした適応プロセスの一部を再現することが容易になっています。
攻撃者は、何年にもわたって積み重ねた経験だけに頼ることなく、さまざまなアプローチを評価し、結果を分析し、手法を改善できるようになります。
これは、防御側にとって新たな運用上の課題にもなっています。
単に攻撃の数が増えるだけではありません。より高度な手法を駆使できる攻撃者の裾野が広がることになります。
攻撃規模の拡大が脅威の状況を変える
AI がもたらす最大の影響は、最も高度な攻撃者の能力をさらに少し高めることではないのかもしれません。
むしろ、はるかに多くの攻撃者が、その能力を大幅に高めるようになることかもしれません。
この変化によって、サイバーセキュリティを取り巻く状況は変わります。
多くの攻撃者が高度な攻撃能力を利用できるようになり、多くの攻撃が標的に合わせてカスタマイズされ、多くの攻撃キャンペーンが状況に応じて手法を変えられるようになります。
AI によって、攻撃者の専門性の価値がなくなるわけではありません。
しかし、攻撃によって大きな影響を与えるために必要な専門性の水準は変わります。
セキュリティチームにとっての意味
セキュリティチームは、この変化を単なる攻撃量の増加として捉えることはできません。
問題は、高度な攻撃者に特有だった行動を、より容易に再現できるようになっていることです。
簡易な攻撃と高度な攻撃の差が小さくなるにつれて、防御側は、誰が攻撃の背後にいるのかという想定に頼るのではなく、どのような攻撃が実行されるのかを理解することに、より重点を置く必要があります。
これからのサイバーセキュリティには、さまざまなシグナルを結び付け、状況を理解し、攻撃者が目的を達成する前に、組織的に連携した活動を特定する能力が求められます。
サイバー防御の次なる進化
AI を活用した攻撃が増えているからといって、セキュリティの専門家を AI に置き換えるということではありません。
セキュリティチームが、これまでとは異なるレベルで業務を遂行できるようにすることが重要です。
人の専門知識は今後も不可欠です。しかし AI によって、手作業を減らし、調査を迅速化し、複雑な環境にまたがる情報を結び付けることで、セキュリティ運用の処理能力を高めることができます。
攻撃者がより高度な能力を利用できるようになるにつれて、防御側も、自らの状況把握と対応能力を高める必要があります。
これからのサイバーセキュリティを左右するのは、単に AI を導入しているかどうかではありません。
より優れた運用モデルを構築できるかどうかが、その差を生みます。
AI ネイティブなセキュリティへの取り組みを続ける
高度な攻撃に、高度なスキルはもはや必要ない。AI によって、高度な攻撃活動を実行するために必要な時間、専門知識、労力が減っています。
電子ブック「Why Cybersecurity Operations Must Evolve Beyond Human Speed(サイバーセキュリティの運用が人間の対応速度を超えて進化しなければならない理由:英文)」では、AI によって駆動され、ますますエージェント型になっている攻撃が、サイバーセキュリティ運用のコストをどのように変えつつあるのかを解説しています。
さらに、「Scaling MSP Security Operations in the AI Era(AI 時代における MSP のセキュリティ運用の拡大:英文)」をご覧いただき、組織がアナリストを増員するだけではセキュリティ運用を拡大できない理由と、AI ネイティブな運用が不可欠になりつつある理由をご確認ください。
また、ウォッチガードの AI ネイティブなデジタルワークフォース「Rai」を体験し、AI 主導の脅威の時代に、AI を活用してセキュリティチームの運用能力を高める方法をご確認ください。