ハイブリッド環境が普及する今、単一の防御層だけで現代の脅威に立ち向かうことは可能か?
2025 年 12 月 9 日 Adam Winston 著
空港の保安検査を考えると、通常導入されているいくつもの対策が思い浮かぶでしょう。保安管理センターが単一の対策のみを採用しており、金属探知機(ネットワークセキュリティ)のみによる危険物の検査だけを行い、X 線スキャナー(エンドポイントセキュリティ)を撤去するケースを想像してみてください。
密輸者(攻撃者)は、禁止されている生物学的または化学物質を持ち込もうとするでしょう。密輸者は空港の保安対策を調査しており、X 線による検査がないことを熟知しています。結果として、金属探知機で検出される可能性のある危険物は避ける行動を取るでしょう。本来であれば、X 線スキャナーによって物質の成分や不審な異常を検知できたはずですが、しかし、X 線スキャナーがオフラインになっているため、密輸者とその荷物は検査を受けることなく通過します。これは、セキュリティ層の欠落(運用の弱点)を悪用する事例です。
ハイブリッド環境におけるサイバーセキュリティでも同じことが起こり得ます。現代の攻撃者は AI や自動化を駆使して防御体制における弱点を見つけるようになっていますが、多くの組織はいまだに単一の防御層に頼っています。
単層防御が通用しない理由
デジタル環境の分散化が加速する中で、データやユーザーは企業ネットワーク、パブリッククラウド、個人デバイスをまたいで移動しており、従来の明確なネットワーク境界は事実上失われています。そのため。ネットワーク層やエンドポイント層など、単一の階層に依存した防御戦略は効果を失っています。
ネットワーク層のみのセキュリティ対策では、境界外における可視性が限定され、暗号化通信やリモートユーザーの活動を適切に把握・防御することが困難です。一方、エンドポイント層のみの対策では、断片的な可視化となり、ラテラルムーブメントやデバイス、ワークロード、クラウドサービス間の接続を把握するための十分なコンテキストを得ることができません。
実際に、これらの階層ごとにセキュリティ対策が分離されていることが、攻撃者にとって利用可能な盲点を生み出す要因となっています。そして、AI による自動攻撃の増加により、これらの弱点はさらに拡大しています。攻撃者はもはや長時間にわたる手動作業を必要としていません。わずか数分で脆弱性を分析し、権限昇格やラテラルムーブメントを実行することで、従来は分断されていた攻撃フェーズを、連続的かつ自律的な一連の攻撃として統合しています。
このような状況に直面する中で、単一層を強化することではなく、統合型のアーキテクチャで複数の層を連携させることが求められています。現代のセキュリティでは、エンドポイント、ネットワーク、ファイアウォール、アイデンティティを横断的に統合し、インテリジェントな防御システムとして協調的に機能させることが不可欠です。
- エンドポイントのセキュリティ対策は、ローカルの挙動インテリジェンスを提供し、異常を検出し、アプリケーションを制御します。
- ネットワークのセキュリティ対策は、コンテキスト情報と一元化されたポリシー管理を基盤として、一見無害に思われる通信フロー同士の関連性を把握して検出します。
- ファイアウォールは、動的なセグメンテーションラインとしてネットワークを分離し、ラテラルムーブメントを制限すると同時に、トラフィックのディープインスペクションを適用します。
- アイデンティティは、セキュリティにおける人間の要素を反映させます。誰がどこから、どの権限でアクセスしているかを検証することで、防御の基盤に信頼を組み込むことができます。
この協調的な多層防御モデルは、可視性を拡大し検出能力を向上させるだけでなく、組織が全く新しい方法でサイバーセキュリティを運用できるようにします。単にテクノロジーを導入するだけでは不十分であり、継続的なインテリジェンス、自動化、専門家による監視を統合し、連携した防御体制を構築することが不可欠です。
MDR:インテリジェントな防御をオーケストレーションするコンポーネント
サイバーセキュリティの有効性は、単一のソリューションの性能だけで判断できるものではありません。重要なのは、複数の階層をいかに成熟した形で統合し、統一された戦略として運用できているかです。このような統合により、環境全体の可視性が高まり、異常をより早期に検出できるようになり、攻撃者が悪用するギャップを解消できます。こうした背景から、ハイブリッド時代におけるレジリエンスを実現するには、複数の防御層を連携させて運用するアプローチが、新たな業界標準となりつつあります。
こうして、MDR(Managed Detection and Response)は、防御モデルの進化形として必然的に登場しました。MDR は単なるテクノロジーの一部ではなく、異なるセキュリティ階層を統合し、検知・分析・対応を連続的かつ一体的に運用する手法です。
MDR(Managed Detection and Response)は、受動的な防御から、知見と継続的な行動に基づく運用レジリエンスへのパラダイムシフトを象徴しています。MDR の目的は、各階層(エンドポイント、ネットワーク、ファイアウォール、アイデンティティ)から生成されるデータを単一のリスクビューとして統合し、異常な振る舞いを予測し、インシデントが発生する前に対応することです。
このモデルは、高度な自動化と人間の専門知識を組み合わせています。マシンが大量かつ高速なデータ処理を担う一方で、アナリストはコンテキストを的確に把握し、戦略を最適化しながら、インシデントの解決ごとに防御体制を強化していきます。サイバーセキュリティは、もはや個別に分断されたソリューションの集合ではなく、リアルタイムで学習・進化し、適応的に機能するシステムへと変わりつつあります。
このアプローチを採用することで、対応の能力が向上するだけでなく、組織におけるセキュリティ対策の成熟度も高まります。これは、各防御層を守る従来型のアプローチから、共有されたインテリジェンスを基盤に運用される新たなモデルへの移行を意味します。すべてのセキュリティ判断は各階層の情報を総合して行われ、すべてのイベントがシステム全体の強化につながります。
最終的に、MDR はテクノロジーと自動化、専門知識を統合し、現代のサイバー防御の理想形を作り出します。これは、基本的な考え方を実践に移したものです。現代のサイバーセキュリティでは、単に攻撃を防ぐだけでなく、攻撃を理解・予測し、それを継続的に学習させて運用に取り入れることが重要です。